静かな炎天
葉村晶シリーズ - 5

きっちりと隙間なくビルを建てて。問題のある場所はきれいに避けて。死んだ人間の戸籍は消して。ムダがない。効率的だ。反吐が出る。

角田港大
2017.03.11(土)若竹七海
このエントリーをはてなブックマークに追加

あのカズレーザーが「アメトーーク!」の書評芸人で一押ししたことからkoboのランキングでもしばらく上位にいたこの作品は、やっぱりすばらしくおもしろかった。相変わらずの葉村晶の有能かつ毒舌のわりに人が良くてまわりにも振り回されやすいっていう探偵小説向きのキャラクターが、読み終わったのにはやくも次が読みたくさせられます。

前作の「さよならの手口」は「悪いウサギ」につづく長編で、大女優の娘を探すという探偵小説の王道を描きつつも、裏カジノの手口をあばいたり、アパートを追い出されそうになったり、襲われて入院したりと、悪戦苦闘しながらも執念で依頼をこなそうとする姿には感動すら覚えたものです。
そして、今作は「依頼人は死んだ」以来の短編集ですが、長編ほど重くなく軽く読めるものの、短編だからこその切り替えしというか、早いタイミングで展開される物語にくぎ付けになります。

そして、前作から葉村が働くことになった古書店「MURDER BEAR BOOKSHOP」のオーナーである富山のキャラクターが、いままでの長谷川所長とまったくちがって葉村に対しする人使いの粗さとか、人の気持ちがいまいちわかってないというキャラクターもまた、物語にあらたな味付けがされたみたいでこれからも楽しみですね。

このセリフは、「血の凶作」という話にでてくるハードボイルド作家が、生後5日でなくなった我が子がデジタル化された戸籍謄本では消されてしまうのことなげいて思わずはいたセリフなんですが、ストーリーとそれほど関係ないもののこういった細かいところまで人物を想定して書かれているのかとおもって溜息がでました。どの物語の人物もバックグランドのストーリーが見えてくるようで、これがこのシリーズの醍醐味ではないでしょうか?

さて、どんな物語でこのセリフがでてくるのか是非読んで確かめてみてください。

瞳の中の大河 (沢村凛著)

貧しい家の者が、いくら勉強しても、何の役にも立てられない世の中を変える方が先だ

シュナン
さよならの手口 (若竹七海著)

いやもうあれだけ休んだんだから、葉村さんはクビでいいだろうと思って次のバイトを探したんだけど見つからなくて。世の中、ホントに景気よくなったみたいですね。

富山店長

コメントをどうぞ