神の子

たった今から、おれは自分の幸せを求めることにした

町田博史
2014.11.09(日)薬丸岳
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いやはや、また好きな作家に出会ってしまったようで、この読後感の良さから、おもわず次回作も読みたいと思わせられました。

母親に戸籍を与えてもらえないまま、義務教育をうけることなく生きてきた町田博史は、そんな生活に嫌気がさし、母親の連れ込んだ男を刺してそのまま家を出た。それからは、生きる為に何でもやると、悪さを繰り返すうちに、とある犯罪組織に拾われ、今では振り込め詐欺のシナリオを考えながら生活している。義務教育を受けていない男が、なぜそんなことができるのか?それは彼の特別な記憶力にあった。
家を出てからの彼は、パソコンに出会うまでは、その知識のすべてを書店で手に入れていた。「直観像記憶」、見たものを画像としてとらえそれで記憶する能力だが、町田の場合はそれを知識としてとらえられ、中身を理解することができた。まさしく天才であり、自然と組織内での地位も高まっていったが、それが組織内部での反感を買ってしまい、トラブルから刑務所に入ることになってしまう。

刑務所でもその次元の違う頭の良さから、トラブルを起こしてはいたが、ある時入所してきた雨宮一馬という男によって少し変化を見せる。雨宮は、町田の唯一の有人である小沢稔にどこかにていたからだった。町田が小沢と出会ったのは家出の前だったが、ともに親に虐げられている境遇だったため、徐々に言葉を交わすようになっていき、家出のあとも一緒に住んでいたのだ。だが、それは同情ではなく、軽い知的障害の稔の戸籍を奪いたかったからだった。だが、自分でも気づかぬうちにどこか情がうつっていたのか、実は刑務所に入ることになったのも稔をかばってのものだった。
そのため、雨宮をほうってはおけなかったのだが、ある日その雨宮から脱走したいと言われ、手を貸すことに・・・果たして脱走は成功するのか?そして雨宮が脱走したかった本当の理由とは?悲惨な境遇から始まった男の人生が、さまざまの人との出会いを経てどのような結末を迎えるのか?ページをめくる手が止まらない。

刑務所に入ってからの再生物語といえば「あしたのジョー」ですが、この物語も、あれに劣らずすばらしいですよ。特に、刑務所を出てから(の方が長いですから)がらりと変わるストーリー展開の良さ(そちらのほうが長いです)と、敵役となる「ムロイ」という男の魅力(敵役が魅力的な物語にはずれはありません)、そのムロイとの頭脳バトルも見所です。
しかし、なんといっても町田のキャラクターにつきるかもしれません。その町田が自分を変えたいと思っていったこのセリフには、ついぐっと来てしまいました。またこのキャラクターを見てみたいですが、多分続きはないかな。。。

春から夏、やがて冬 (歌野晶午著)

月と日が入れ替わっているからといって意味などあるわけないのに、何か特別なものを感じてしまった。困っている君を見ていたら、あの子が困っているように思えてきて、とても放っておけなくなってしまった。

平田
暗闇にひと突き (ローレンス・ブロック著)

バーバラはあの子をしっている誰かに殺されたんです。葬式に来た誰かに、あの子の死を悼むふりをしていた誰かに。冗談じゃない、私には耐えられない!

チャールズ・ロンドン(バーバラの父親)

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