殺し屋ケラーの帰郷
ケラーシリーズ - 5

あらゆる人間の不幸は部屋でじっとしていられないことに根ざしている

パスカル
2015.03.15(日)ローレンス・ブロック
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まさか!?、前作ケラーの「殺し屋 最後の仕事」で、殺し屋を引退したはずのケラーが、まさかの復活。でもやはり以前のケラーとは少し違っていて。。。

最後の仕事と思って引き受けた依頼で嵌められ、なんとか逃げ延びたものの身分をいつわざるを得なくなり、住む場所も変え、今度こそ殺し屋を完全に引退していたケラー。それだけでなく、その逃げ延びた町ニューオリンズで、ひょんなことから命をすくった女性、ジュリアと結婚し、子供も生まれて幸せな生活を送っていたのだった。仕事は、前職で逃亡中に身に着けたリフォームの技術で会社を興し、それで生計をたてて、大好きな切手の蒐集にもよりいっそう勢がでていた。
そんな幸せな日々を襲ったのがあのリーマンショックだった。仕事が激減したケラーは、預金で生活はできたものの、大好きな切手を買うことができずにいたのだった。そんな折かかってきた一本の電話は、なんとあのドットからだった。ひそかに仕事を復活させたドットは、ほかの殺し屋に仕事を回していたもののどうしても都合がつかず、やむにやまれずケラーに電話をかけてきたのだった。
切手を買うために仕事を引き受けたケラーだったが、一度は全米で指名手配された身。何事にも神経すぎるほど慎重になり、以前ほどの自身もなくしていたが、果たしてそんなケラーにうまく人を殺すことができるのか?結婚し、子供もいるケラーが、人を殺すことでどのようになっていくのか?一ページ、一ページに丹念に描かれるケラーの心情に、なぜかやっぱり愛さずにはいられません。

ドットがケラーに悪いなと思いつつも、引き受けてほしいというのが言葉の端々に現れていて、この二人の距離感がなんともいい感じで、相変わらずの会話のおしゃれさもさすがです。そして前作から登場しているジュリアとの新たな関係性が、またケラーを魅力的にしていて、ますます大好きなキャラクターへと成長しています。
ただ、あまりに切手への愛情があふれ出てきて、ますます切手に関する情報が多くなっているのが、大して切手に興味がないというか、海外の切手事情とかどうでもいいわ!と思いつつも読んでしまいますけどね。

今作で殺される側の人々は、殺されても仕方がない人が多いのですが、そんな人たちに対しケラーがふっと思い出したこのパスカル言葉が、なんとも真理をついていてうなづいてしまいますね。

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