叫びと祈り

風が走る音は、誰かの悲痛な泣き声に似ている

2014.08.03(日)梓崎優
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 ボクらがいつも探しているのは「新しい物語」だろう。そして本書は久々に出会った、本当に「新しいミステリー」だった。それは、奇をてらったようなものではなく、王道のミステリーでありながら、思いもよらない舞台設定や動機、そして短くも真理を説くようなセリフで構成された見事な小説だった。

 「サハラ砂漠に残る塩の道」を、自社で海外の同行を分析する雑誌の取材するため、塩を採掘するキャラバンに同行することになった斉木は、過酷な旅に参りながらも、ようやく塩を採掘する集落にたどり着く。ホっとするのもつかの間、次の日には帰りの長旅がまっていた。ボロボロになりながらも旅を続ける斉木に、突如砂の海が牙をむく。
 それは「シムーン(毒の風)」とよばれる竜巻だった。幸い、シムーンはかすっただけだったが、おとずれた静寂の中になったのはなんと、旅を率いる長の死体だった。いったい何がおこったのか?長がシムーンの対処方法を知らないわけがない。そしてなにより、旅の道しるべは長しか知らない。長を失ったキャラバンは果たして帰ることができるのだろうか。。。

 これは本書の中の1篇目である「砂漠を走る船の道」という物語であるが、ラクダのことを「砂漠の船」というらしいです。本当かどうかわかりませんが、これだけでぐっと引き込まれますね。他にも、白い風車が連なるスペインで、友人の彼女が消えた理由を探す物語、エボラ出血熱が発生したアマゾンのとある村でおきた殺人事件など、どれもこれも新鮮でページをめくる手がとまりませんでした。これは今年の中ではもちろん、ここ数年読んだもののなかでもトップかもしれません。

 作者の「梓崎優」さんのデビュー作ですが、作者についてはあまり詳しい情報がないようで兼業作家なんだくらいしかわからなかったのですが、きっと世界中を飛び回るような商社とか、旅行関係とかな気がしますね。主人公の斉木は7か国語を操り、世界のさまざまなところに赴くわけですが、その描写がわかりやすく、映像もなんとなく浮かびやすいので相当詳しいんだと思います。
 そういえば、垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル」も、日系ブラジル人たちが日本に復讐を企てる作品で、その描写がわかりやすいとおもい作者がどんな人かと思って調べたら旅行代理店に勤務していたと知って納得したんだよね。これも度胆抜かれたな~。

 次回作「リバーサイド・チルドレン」も、カンボジアで起きたのストリートチルドレンの連続殺人というものなので、非常に楽しみです。

楽園 (宮部みゆき著)

わたしこそが、犯人をあの犯罪へと突き動かた衝動に魅せられて、彼らの後をついていった模倣犯でした。

前畑滋子
メルカトルかく語りき (麻耶雄嵩著)

故事によると、種を明かされたとき凡人はただ感心するだけだが、愚人は自分にも出来たと云い張るものらしい。君はまさにその愚人の見本だな。

メルカトル鮎

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